SAQITANさんとの思い出
当ブログをご覧になっている方々なら知らぬ人はいないであろう、ラブドール写真家のSAQITANさんの訃報が届き、少なからぬショックを受けています。
訃報
— B・カシワギ よく食べる人 (@guru10craft) December 6, 2021
友人であり仕事仲間であった、ラブドール写真家のSAQITAN(SAKITAN)さん@yukityan129 が、闘病生活の末11/29に永眠されました。葬儀は既に済んでおり、来春追悼の会をなんらかの形で行うようにご両親とお話し中です。早すぎる別れで大変寂しくなりますが、安らかなる眠りを心からお祈りします。 pic.twitter.com/nI3SJL9MF5
SAQITANさん(旧ハンドル名:SAKITANさん)との交流が深かったとは言いづらい私がアレコレ語るのは失礼にあたるのではないか、そんなふうにも考えましたが、自分だったらどうだろう、と振り返ったとき、一人でも多くの思い出の中に残りたいと思うのではないだろうか、と考え直しました。
特に4~5年前に一度お会いした際に語られていた、いちラブドーラーとしての熱い言葉の端々からは、何らかの爪痕を残したい、そのような強い意志を感じるものがありました。膨大なインターネット上の場末も場末ではございますが、SAQITANさんとの思い出を語る1ページがあっても良いのではないか、浅慮ながらそのように考えてこうして記事を投稿することと致しました。
SAQITANさんとの出会い
出会い、といっても最初はあくまでインターネット上でのことであり、たまたまブログを見かけたに過ぎません。つまり、このページをご覧のほとんどの読者の皆様と私の関係と同じです。
あれは今から8年ほど前の2013年8月のことでした。
それ以前から「人形美の魅力」というブログの存在は知っていましたが、公式ギャラリーに勝るとも劣らない素敵なお写真ばかり掲載されているサイトで、「可動範囲が~」「色移りが~」などと実用面での話ばかりしている当ブログとは方向性がまったく異なることもあり、コメントを入れることすら躊躇していた頃です。
一方で、お迎えレポートにおいて、出来る限り肉眼で見たままを再現した写真を撮りたい、という渇望を持っていた時期でもあり、こんな素敵なラブドール写真を撮る方と交流したいという気持ちがあったのも、また事実です。
そんな折、コミックマーケットで頒布したラブドール写真集をブログでも販売する、という告知があったため、私は飛びつきました。
From: ジジの落書き(仮) Date: 2013年8月16日(金) 15:22 Subject: 購入希望 To: sakitan SAKITANさん、こんにちは! Twitterでフォローさせて頂いているジジです。 ラブドールデジタル写真集ぜひぜひ購入したいので 申し込みさせてください m(_ _)m あと、写真集届いたらパッケージの写真と SAKITANさんのブログをうちでも紹介させて頂いても宜しいでしょうか? ■ジジの落書き(仮) http://laladoll11.blog136.fc2.com/
このメールにはすぐ返信があり、ブログの紹介も快く承諾してくださいましたので、2013年9月に「相互リンクしました【人形美の魅力】」と題して、紹介記事を掲載させて頂くこととなりました。
Twitterにおいては特に気さくに話しかけてくださり、私が撮った写真を面白おかしく加工して返信してくれたり、ラブドール愛好家を増やそうと画策する当ブログを面白おかしく表現したイラストを作ってくれたり、心からTwitterって楽しい!!と思えるひとときを過ごさせて頂きました。
ラブドーラーの急増と距離感
そうして1年近く、Twitterで楽しく交流させて頂いていましたが、Twitterのフォロワー数が数百から千人単位に増えていき、私の処理能力を大きく超えてしまいました。
そう、SAQITANさんが撮る写真はインパクトがあり、もっと見たいと思わせる魅力のある写真です。そりゃもうフォロワーも増えます。そしてSAQITANさんをフォローした方のところへはこちらもオススメと出るのか、ジジの落書き(仮)までついでにフォローされるわけです。
ブログ読者さんとの交流にでも使えれば、程度に考えていた私としてはキャパオーバーなのですね。身内ネタ的なつぶやきをしただけで「それってどういう意味ですか?」とあまり知らない人からマジレスされるとキツいじゃないですか。SNSが当たり前になった昨今では、そのくらいスマートに流せそうなものですが、なにぶん不器用な私はひとつひとつに愚直に返信してストレスを溜めるばかり。
一方でSAQITANさんは更にフォロワーを増やし、どんどん有名になっていくのに、私との交流も欠かしません。この人めっちゃ器用だな!と思いつつも、このままでは良くない、とも感じました。
当ブログをお読みの方はよくご存知かと思いますが、私は感じたことをそのままズバリ呟いてしまうタイプだし、「ここだけの話」みたいなのが大の苦手です。更に言うと、SAQITANさんはメーカーとのコラボ等はウェルカムなタイプで、私はメーカーとは一定の距離を保ちたいタイプです。
お互い変態的な会話だけしている分にはものすごく相性が良いのですが、主義主張の部分では将来的にぶつかってしまう恐れを感じました。
このまま交流を続けていれば近い将来、観賞派 vs 実践派みたいなおかしな派閥が形成される可能性すらある。そう感じた私はすぐにTwitter界隈から足を洗いました。
SAQITANさんのコミュ力に感服
先述のようなことはいちいち語ったりはしませんが、おそらく私のまわりにいる方々はわかっていたでしょうし、SAQITANさんご自身も私が距離を置こうとしていることはわかっていたはず。
それでもちょっとお会いしませんか、と声をかけることのできる胆力を持つ人物。SAQITANさんはそういうお人でした。
2017年5月に投稿した「アルテトキオのショールームにちょこっと寄ってきた」で軽く触れていますが、このときはじめてSAQITANさんと実際にお会いしました。
アルテトキオのSRへ訪れた際、SAQITANさんは既に撮影をはじめており、その機材の豊富さと本気度で「仕事やんけ!」と思わずツッコミを入れてしまったほど。(実際、仕事として請け負った撮影だったらしいですが)
私の中ではドーラーのSAQITANさんのイメージのほうが強かったので、このときはまだラブドール写真家という印象を持っていなかったんですよね。
そして撮影後、ファミレスでお茶をして色々語り合ったのですが、内容はラブドールに限らず、お互いどんな仕事を経験してきて今に至るのか、なんてプライベートにつっこんだ話をしてしまうくらいなのに、どちらも言葉に詰まるようなこともなくスラスラと、十年来の友人のように語り合うことができ、とても濃く、そして楽しい時間を過ごすことが出来ました。
ネット上でのイメージとは異なり、実際にお会いしてみるとズバっと本音を話すタイプの方で、気が楽だったというのもあります。もしかしたら私に合わせてくれたのかも知れません。
こんなことを書くとSAQITANさんのファンに袋叩きにされそうですが、私はその日、ご本人に向かって「まるでCGみたいな写真ですよね~」という感想を伝えました。どんな反応を返されるのか興味があったからです。意地悪ですよね。
しかしご本人は特に気分を害された様子もなく、自分のチンコが勃つ写真を”作っている”のだと満面の笑みを浮かべておっしゃいます。
この答えには私も満面の笑みです。
当ブログには当ブログの主張があって、できるだけ肉眼で見たままの写真を掲載して、ユーザーの本音を書き、メーカーにすり寄らない、などといくつもの自分ルールを定めています。しかし、結局のところ、見たまんまの写真なんてありえないというのも理解しています。人間の脳内補正の凄まじさよ…。
そんな葛藤の中、SAQITANさんの語る自分がヌける写真を作っているだけですよ、という言葉はガツンと頭を殴られたかのような衝撃と共に記憶に刻み込まれました。
当時は色々スケジュールが立て込んでいたようで、1時間くらいでお開きとなりましたが、終始笑いながらお互いに馬鹿な話をしつつ、最後の最後の別れ際に「ジジさんとはもっと話していたかった。………いやほんとに。」と真顔になられたときは、こいつぅ~!人たらしだなぁ~!などと思ってしまったものですが、あれからもう4年ですか。
ラブドールという共通の趣味がある以上、いつかどこかで道が交わることもあるだろう、などと呑気に構えていたツケでしょうか。
SAQITANさん、貴方ともう一度話す機会が二度と訪れないことに、深く静かな悲しみを感じています。